トヌ島

東の木材浜では、人と大きなもぐが丸太を動かしています。谷沿いを一時間歩けば、倒木にきのこの生える湿った森。さらに上の乾いた尾根には栗やくるみが実り、樹皮をはがす爪音や、枝を渡る気配が重なります。
木材のほか、干しきのこ、栗、木の器が海を渡ります。塩を作るセラの釜にも、トヌの木の端材が薪として届きます。
秋にもぐが実を埋め、掘り忘れた場所から、翌春には若木が出ます。木の穴で休む個体は、尾根を巡る猛禽の影が過ぎるまで顔を出しません。
崩れた谷底の運材路には、車輪の幅に削れた石が残ります。人が斜面の上へ道を移したあと、古道のくぼみは雨水をため、小さな生き物の水飲み場になりました。
舟旅の覚え書き
カヤから木材浜へは約48km、帆走9〜11時間。急ぎの小荷物はアシロ西岸へ陸路で運び、短い海峡を渡します。