木口の棚
大きな木の仕事のすぐそばで、小さな道具を直す場所。匙一本にも、丸太の頃の曲がり方が残っている。

丸太を引き上げる浜の端に、木工のエダの小屋がある。店の名を尋ねても「木口の棚のところ」としか返ってこない。外に張り出した棚へ、木の切り口を客の方へ向けて並べているからだ。乾いた木の匂いと、海から上がったばかりの樹皮の匂いが、戸口で混じる。
ここへ来るのは新しい椀を買う人だけではない。柄の抜けた道具、片足の短くなった腰掛け、使う手に合わなくなった匙も持ち込まれる。直せるところを確かめる前に、エダはいつも一度、持ち主に使ってみせてもらう。台の前で汁を飲んでいる客がいても、昼食とは限らない。
若い見習いのリクは、同じ形のものを並べるのが得意だ。最近は節や曲がりを残した道具も作る。小屋の奥には太い柄、片側だけ平たい柄、握るところがふくらんだ柄がぶら下がる。どれが上等かという順はなく、手に載せてから選ぶ。
削りくずは乾いたものを分け、焚き付けにする人へ渡す。太い端材は塩場へ行く荷にも交じる。小さな木片には、子どもが炭で字を書く。浜で大きな舟へ積まれなかった木にも、島を渡る方法はいくつもある。棚から一つ選ぶ前に、指で年輪をたどってみたい。