もぐ日和世界の案内帖

霧ほどきの踊り場

茶畑の途中にある、荷を下ろせる石の平場。海が見えるまでの時間を、ここでは湯を飲んで過ごす。

ウネ島・茶畑の坂の中腹

南の船着きから茶畑へ上がる道の途中に、籠を二つ並べられる石の踊り場がある。茶摘みのシノが草を刈り、低い腰掛けを置いている。背中の荷を下ろすと、坂の上で鳴っていた桶の音が、少し遠くに聞こえる。

霧の濃い日にシノがいれば、蓋をした湯の小鍋を持って来ることがある。最初は葉を入れず、湯だけを少し飲む。手の温まるころに茶を足す。シノの家のやり方で、島じゅうの決まりではない。「急いで香りを見つけなくていい」と本人は言う。

近くには、使われなくなった茶畑へ向かう古い石段も見える。人が上がれなくなった先へ、小さな足跡が続く。いま使う道から眺めれば、石のくぼみにたまる水や、低い葉の下を渡る影に気づくことがある。斜面を横切る細い線は、どれも同じ行き先ではない。

霧がほどけると、下の船着きが一度に現れるとは限らない。先に一枚の屋根、そのあと白い帆、最後に海の細い帯。茶を飲み終えた器の底が冷めるまで見ていたくなるが、帰り道の時間はシノや同行の人と確かめておこう。眺めは翌日も変わる。

案内帖の目次