つぎあて窓
日暮れに白い布が掛かる、西浜の小さな仕立て屋。直したい服と、今夜の話を持って訪ねる。

西浜の斜面にあるハルとユネの家は、窓の横に四枚の色布を掛ける。ニカから移ってきたばかりの親子が、昼には会えなかった近所の人たちのため、夕方にも窓を開けたのが始まりだ。今では舟番や夜の仕事へ行く人が、出掛ける前に袖を差し出す。
直すのは服だけではない。袋の底、雨戸に掛ける布、器を包む端切れ。ハルが針を扱い、十四歳のユネは預かる品の印を確かめ、合う布を並べる。客が継ぎ目を隠したがれば近い色を、見える方が好きなら少し明るい色を選ぶ。迷う間は、窓台へ品を置いてよい。
白い布が掛かっているときは、家の人が起きている。店の窓が開いていれば、声を掛けてみよう。灯りがあっても仕事を終えている晩はある。看板の裏にはユネの字で、日が沈んでから、母さんが眠くなるまで、とある。その下の小さな「ユネも」はハルの追記だ。
岩棚の光が見えた夜には、翌日その話が窓へ持ち込まれる。誰がどこで見たか、どれくらい長く残ったか。話す人の指が布の上を走り、光の形みたいな線を作る。持ち帰れないものにも形を残したくなるのは、針を持つ人も、舟で来た人も同じらしい。