ガロ
ミナが生まれる前から村に暮らす、肩の高さ一メートルほどのホエリ。枯れた穂のような襟と、左耳の古い裂け目が目印です。浜では丸太を押し、庭では血のつながりを越えて幼体を見守ります。暑い昼過ぎは庇から出てこないことも。幼いミナはその腹に背を預け、母の仕事を待ちました。今は、ミナが食事を用意するあいだ、幼体を待たせておいてくれます。
ガロが村へ来た頃は、まだ今より細い体でした。尾根の群れと落ち豆を拾いに来て、冬には浜の薪小屋で雨をしのぐようになりました。サヨの窯へ運ぶ薪束へ鼻を入れて転がしたのが、初めて人の仕事を手伝った日だといわれています。
太い前足なら何でも平気、というわけではありません。濡れた縄が脚に当たると、仕事の途中でも座り込みます。オルは前足から離して縄を回し、押してほしい場所を一つだけ示します。ガロが耳を向けるのを待つ時間も、浜の仕事のうちです。
寝る前に鼻先で確かめる幼体は、自分の子ばかりではありません。ヤブミミの籠やミズワタリの浅い水鉢の近くに体を横たえ、それぞれの寝場所を残します。人の赤ん坊だったミナを止めた穂の襟が、今は別の小さな足の行き先を見ています。
庇の柱には、襟をこすって磨かれた低い場所があります。冬、ミナは風上に流木を積みますが、たいてい体の幅より小さく作ってしまいます。ガロが伏せて片側が崩れると、ミナは残った木を運び直します。庇の冬支度は、毎年二度かかります。
日々の習慣
煮豆は少し形が残る方から。機嫌を見るなら、太い尾よりも耳の向きが手がかりになります。