もぐ日和世界の案内帖
アシロ島・下のかまどから北の浜へ

青い欠片の行き先

水くみの数を書いていた青い欠片が消えた。ミナの捜し物は、果物の舟の小さな交換場へつながっていく。

舞台:アシロ島・下のかまどから北の浜へ
登場:ミナ、サヨ、オル、こむぎ、ゆず · 約3分

水を三杯くんだところで、海がなくなった。ミナがそう呼んでいたのは、母の鉢から取れた、丸く磨かれた青い欠片だ。炭で数を書き、洗えば小さな海へ戻る。今朝は薪棚に置いたはずなのに、同じ大きさの白い貝殻が、伏せた月のように残っていた。

まず、こむぎの寝床をのぞいた。木屑二本、茶色の石一個、昨日から探していた匙。こむぎはそれらを前足の間に寄せ、ミナの手を見た。「匙だけね」取り上げると、丸い鼻が一度ついてきた。青いものはどこにもない。代わりに、水を何杯くんだか分からなくなった。

「四杯目を今からくめば、四杯になるよ」と、母は土をこねながら言った。ミナが白い貝を見せると、サヨは指を止めた。「その貝、うちの浜ではあまり見ない形だね」。朝から柑橘の匂いがしていることを、そのときミナは思い出した。

父に浜へ行くと伝え、一緒に荷の道を下りた。果物の舟では空いた籠が重ねられ、舟の人が帆綱を直していた。ゆずは船縁の手前の板に、貝殻を並べている。右の列だけ鼻先で押してそろえ、その先に、ミナの海があった。炭の三本線もそのままだ。

「それ、わたしの」。手を伸ばすと、ゆずは青い欠片を押さえた。怒った声は出さなかったが、体を低くして、板の反対側へ向き直る。ミナは膝を引いた。家の棚だったら自分のものなのに、この板の上では、急に決まりが分からなくなった。父は縄を巻きながら待っていた。

ポケットの白い貝を取り出し、列から少し離して置いた。ゆずは匂いを嗅いだだけで動かない。貝を裏返すと、内側に細い桃色の筋が光った。今度は鼻が近づいた。ゆずが貝を右の列へ運んだ拍子に、青い欠片は板の端へ押し出された。ミナはそっと拾い、ゆずが振り向くのを待った。

ゆずは欠片を追わず、列の間隔をまた直した。いいのかどうか、言葉では確かめられない。それでも手の中の海をしまうまで、橙色の背中は近くにあった。「次は、置いた場所も描いておこうかな」とミナが言うと、父は「それなら父さんの鑿も描いてくれ」と笑った。

帰ってから数える札を戸柱へ移した。青い欠片は、母が作ってくれた石の箱に入れる。その隣に小さな空きを作った。次の舟が来たら、桃色の筋をもう一度見せてもらいたい。夕方の水くみは一杯目から数え直した。海を見つけた日くらい、それでもよかった。

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